■ イベントグラフィック ■
【美流】
「いいえ、わたくしはこの時が至るのを、一日千秋の思いで、お待ち申しあげておりました」

【美流】
「そして今ようやく……」

【アイナ】
「や、やるわね、ツカサ……」

【ツカサ】
「アイナこそ!」

【アイナ】
「でも……負けないんだからぁッ!!」

【ツカサ】
「っ!」

【ツカサ】
「ともかちゃん、この子……残念だけど、死んじゃってるみたいだ」

【ともか】
「え……なんで死んじゃうの? わたし、ちゃんと世話してあげたのに……」

【ツカサ】
「ともかちゃん、生きているものはいつか、必ず死を迎えてしまうんだ……」

【ともか】
「や、やだよ……そんなのやだ……」


【天咲】
「誰も天咲がここにいるのを望んでましぇん……」
【天咲】
「天咲は、ここにいるだけで、みんなを病気にしたり、 悪いことをしたり、迷惑かけたりするでしゅ……いらないのでしゅ……ぐすん」


木刀を叩きつけたときに返ってきた、あの恐るべき反動が、まるでない。
まるで水流にひたしただけのように、敵が綺麗に左と右とに分断され、落下していく。

【ツカサ】
「夜刀の真太刀」

【美流】
「ツカサさま……」


【ツカサ】
「先生は僕が守るよ……絶対に守る」

【ツカサ】
「もう辛い思いはさせない。約束するから」

【セツナ】
「ツカサくん……」


「……」
どこか圧倒的に懐かしい感触が、脳裏に襲いかかってくる。
胸の内に、せつない感情がわきあがる。
いったい、どういうことなのだろう?

「キミは……だれ?」
思わず、そう訊ねていた。

「…が……らないの……か?」
何か言っているのはわかる。だが、言葉が届かない。
まるでチャンネルのずれたラジオのように、波動だけがノイズとして伝わってくる。

「……どうしたの? 僕に何を伝えたいの?」
「…………………いたのです」


【アイナ】
「あー、そうそう、こんなの描いた描いたー」
「うーん。やっぱり、好きだったマンガの話が混じってるなぁ」

 気づくと、アイナは僕に体を預けながら、絵本のページをパラパラとめくっていた。
 そのアイナの素肌が、僕の目の前にあった……
 フローラル系のシャンプーのいい匂いが、僕の鼻をくすぐる。

【アイナ】
「……我ながらヘンな話、描いたわね」

「ねえツカサ」

 その瞬間、いま僕に寄りかかっているのが『女の子』だという事実に、改めて気づかされる。
 心臓が勝手に、バクバク動きはじめて……

【アイナ】
「さっきから黙っちゃって、どしたの?」


【ツカサ】
「の、ノートに筆ペンで、書き取りをしているの??」

【ともか】
「はい。私はすべての教科で筆ペンを使ってます」

【ツカサ】
「で、でもともかちゃん、筆ペンで英語の書き取りなんて、大変じゃないの?」

 見るとノートには、おそるべきことに"達筆"なアルファベットの群れが並んでいた。

【ツカサ】
「うわ、超絶な筆記体……」

【ともか】
「そうですか? 普通だと思いますけど」


【???】
「きゃああああああああああああああああああ!!」

 見たこともないほど醜悪な妖が、セツナ先生を襲っていた。

【セツナ】
「ううっ……」

 無我夢中で彼女と妖との間に割ってはいる。

【ツカサ】
「チイィイィィィ!」

 その巨大な腕を、夜刀の真太刀で受け流す。
 と、その瞬間、妖の胸元が大きく開いた。

【ツカサ】
「もらったあぁあ!!」

 妖の喉元に、剣の切っ先を突き刺す。


【美流】
「天咲ちゃん! だめですよ、着替えもせずに出歩いては……」

【天咲】
「あはははー! ツカサー! つかまえたでしゅー!」

【ツカサ】
「こ、こら、天咲! 濡れたまま抱きつくな!」

【美流】
(私でさえ、そんなことしたくてもしたことなんてないというのに……)

【天咲】
「今度は一緒に入ろうでしゅー。お風呂、気持ちよかったでしゅー」

【美流】
「天咲ちゃん! ツカサさまが、困ってらっしゃいますよ? さあ、こっちへいらっしゃい」

【ツカサ】
「どさくさにまぎれて、一緒に抱きついてくるんじゃない!! 覇流、助けてくれー!!」

【覇流】
「自業自得」


【美流】
「やっとお逢いできましたね、ツカサさま」

何だろう?
それは夏の匂いだろうか? それとも夕暮れの?
空気の流れに運ばれた女の子の香りが、
同時に胸に迫る想いを運んできた。

【ツカサ】
「きみは……」


妄想のような白日夢を挟んで、現実がつながった。
あの時、僕は渾身の一撃をアイナに打ちこもうとしていた。
だがその精神が最高に緊張する瞬間、なぜだか意識が飛んだ。
そして精細を欠いた僕の打突は標的を外し、
代わりに面一本をもらったというわけだ。
現実の時間にして一秒もなかったろう。
だが試合ではそれは、大きすぎるスキだった。

【アイナ】
「んもう、だから避けるなり払うなりすればよかったでしょ?」

【アイナ】
「ったく、練習中になにボーッとしてるんだか!?
 大会、近いんだからね。
 わかってるの、水内ツカサくん?」


【美流】
「ツカサさま! ともかちゃん、
 あの黒い『馬なし馬車』に近づいてますよ?

確かに美流の言うとおり、校庭を進むともかちゃんは、
あの黒塗りの大きな車の方へと徐々に近づいていった。
すると、車の中から、いかにも“SP”だと言わんばかりの、
黒い背広にサングラスをかけている男が現われる。

【アツシ】
「すご……今の日本に、
 あんな黒づくめの格好をする奴なんているんだ」

【ツカサ】
「驚くところはそこか?」


彼女は窓辺に、たたずんで居た。
夕日をいっしんに浴びた白衣は、オレンジ色に染まっている。
彼女そのものが、黄昏に包みこまれてしまったかのようだった。

【ツカサ】
「先生……」

そこまで口にして、その後どうしたらいいかわからない。
何か思いもかけず神聖な現場に、土足で踏みこんでしまったような、
そんな気さえした。

【セツナ】
「……」

黒いリボンが、艶やかな髪をきつく結びつけている。
憂いを秘めた視線は、どこか虚空に向けられていた。


【ツカサ】
「……妖だろうと、人だろうと……
 子供の相手をするのってのは……エネルギーいるなあ……」

【美流】
「そうですね……すう、すう……」

僕と美流も、さすがに疲れ果て、重なり合うようにして眠った。

【天咲】
「……ツカサー……みるねー……
 天咲……ここにいても……
 いいんだねー……うにゅぅ……」